ジャズピアノのバッキング練習に『イージージャズ・コンセプション ピアノ・コンピング』

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学生のころに出会えていたらと悲しくなるくらいの良書

ジャズ演奏の8割はバッキング

ジャズピアノを始めて、かれこれ9年近くになります。
始めたきっかけは大学のビッグバンドのサークルに入ったとき。
それ以前からジャズはずっと好きで、ジャズミュージシャンに対する憧れというか、崇敬の念は抱いていたのだけど、そのころはまだコードも知らなかったので、ガチのジャズ研にいきなり入る度胸がなく、ビッグバンドだったらピアノはあんま目立たないから初心者でもやりやすいかもと思ったのがビッグバンドサークルを選んだ理由。

まぁこの弱気な考えにとってはビッグバンドを選んだのは確かに正解ではあったのだけど、いま振り返ってみるとあのとき勇気を出してジャズ研に入っていればなぁと痛切に思う。どうせ隣の部室だったんだから、ふらっと迷い込んでしまえばよかったのに・・・。
これまでの人生で後悔したことってほとんどないけど、これだけはほんとに後悔している。
ジャズ研に入ろうか、ビッグバンドに入ろうか、迷っている方がおられましたら、とりあえずジャズ研にはいっといたほうがいいです。コンボができればビッグバンドもできますから。逆は無理なんです。

最近、ジャズのセッションに参加するようになった。
まだ二回しか行っていないけど、セッションに出て初めて、自分に足りないもの・練習しなければいけないことが明確になってきたと思う。
やっぱりジャズは実践ですね。家でいくらひとり練習してても、ジャズはうまくならない。バンドと合わせてみてはじめて気づくことって山のようにある。

そのなかで一番実感したのが、「ジャズピアノって、演奏時間のほとんどはバッキングなんだよな」ということ。

これ、ひとりで練習している限りでは案外気づかないのではないでしょうか。

ジャズの練習というと、アドリブソロをとることだけに頭がいってしまい、それ以外のことをおろそかにしてしまいがちではないでしょうか。でも、ジャズの演奏って、ソロだけじゃないんですよね、あたりまえの話ではありますが。
ピアノトリオならともかく(それでもベースソロ裏のバッキングとかありますし)、管が入ってきたらピアノは自動的に「伴奏者」に変わるんです。演奏時間の8割は伴奏のために費やされます。
セッションなんかだとトランペット・サックス・ギターの3トップとかがあるので、その人たちがソロをやっているあいだ、延々バッキングをし続けなければなりません。
そしてバッキングのボキャブラリーがないと、この時間が苦痛でしょうがないんです。

大学時代のじぶんがまさにそうでした。
ビッグバンドのピアノって、まぁ9割5分伴奏です。
イントロを弾くことは多いですが、ソロがあるのは3曲に1曲くらいでしょうか。
ベイシーとかになると、ソロというよりフィルみたいなもんですから、ピアニストには物足りません(もちろんベイシーのあの独特のタイム感をもったプレイは最高なんですが)。
管とブラスが盛り上がっているなか、誰にも聴こえないであろうバッキングを、それもじぶんでもよくわからないままに続けるというのは、退屈に過ぎるというものです。じぶんでもよく2年間やったなぁと思います。
さっさと辞めてお隣のセッションに参加しておけばよかった。
ジャズが好き、4ビートのなかにいられればもう何もいらないという性格が仇になったともいえます・・・。

ピアニストにとってジャズの演奏の8割はバッキングです。ここを勘違いしてはいけません。

「ソロピアノだけしかやらない」とか「バド・パウエルみたいなベースとドラムは関係ないトリオをやるんだ」という方を除いては、ジャズピアニストにとって、バッキングはソロに劣らず重要です。むしろ、バンドメンバーにとってはソロ以上に重要でしょう。ピアノソロはピアニストの問題だけど、バッキングはバンド全体のサウンドの問題になるからです。
学生時代のバンドマスターも言ってました。「ソロを取れなくてもいいからバッキングの上手い奴をのせる」って。
そんなひどいことあるかと当時は思いましたが、なるほどなぁといまは思いますね。
バッキングの引き出しの少ないジャズピアニストは、ジャズピアニストとして失格なんです。
なによりも悪いことに、やっている本人が一番楽しくない。なにせ、演奏時間の8割を退屈しながら過ごすことになるわけですから。
じぶんがビッグバンドを2年間で止めることになったのも、これが一番大きな理由だったと思います。
バッキングをどうやって弾けばいいのか分からなかった・・・。

スタンダードナンバー15曲のコード進行を、アメリカの一流ミュージシャンのマイナスワンCDで

この本は学生のころ、それもなるべく早いうちに出会えていたら、そのあとどんなに変わっていただろうと考え、ちょっと真剣に悲しくなるくらいいい本です。

内容はスタンダードナンバー15曲のコード進行(著作権を考慮し曲名とメロディーは変えてありますが、ニュアンスを残したタイトルとコード進行を見ればすぐわかります)にあわせたバッキングの押さえ方が掲載されているだけというシンプルなもの。
付属のCDにはバンドの演奏がピアノ入りと無しでそれぞれ収録されていて、まずはCDでイメージを掴んでから譜面を見て押さえ方を練習、仕上げにマイナスワンのトラックで擬似セッションが可能になっています。

この本のいいところは以下。

  1. 実用性最重視のとにかく実用的な内容
  2. 超豪華なミュージシャンによる録音
  3. ソリストのアドリブも掲載

実用性最重視のとにかく実用的な内容

理論も冒頭にちょこっとありますが、詳しくは他の本を参考にしたほうがいいです。
たぶん初心者の方には「なんでこのコードにこの音が使われてるの??」が頻出すると思われます。
しかしこの本は、「こう押さえとけばとにかくカッコいいサウンドが出るからとりあえずやっとけ」という、超実用的な内容です。理論は別の本で勉強しましょう。

ただジャズには、こういう「なんだかわかんなくてもとりあえず繰り返しやって身体に染み込ませろ」という練習が一番効くんです。

譜面通りに弾くなんてジャズじゃない、そんなんじゃ納得できない、私はじぶんのサウンドを作るんだという方はジャズを勘違いしているので考え直したほうがいいです。
いま書いていて思いましたが、じぶんもそう考えていた節があります。ジャズは個性の音楽だから、そんな出来合いのヴォイシングじゃいやだ、とか。。。

確かにジャズはミュージシャンひとりひとりの個性を楽しむ音楽ですが、そこには不変のルールみたいなのがあります。多かれ少なかれ、みんな使っているもにがあります。野球で言えばバッドみたいなもんで、それがなければゲームに参加できないんです。
セロニアス・モンクにしろ、ハービー・ハンコックにしろ、ブラッド・メルドーにしろ、みんなそこを通過したうえでオリジナルへいくんだと思います。
この本のバッキングはいわゆるシェルボイシングを左手と右手で組み合わせたものがメインです。
知ってしまえばなんだそんなもんかと思いますが、じぶんで作るのはまぁ難しい。
こんな簡単にカッコいいバッキングができるのかと、目鱗でした。

そう、カッコいいんです、この本に載ってるボイシングは、どれも。
CDで聴く限りではもっと難しいことをやってるように聴こえるんですが。
シンプルでありながら素晴らしいサウンドを響かせる。アップルの製品みたいな「発明品」だと思います、このボイシングは。

超豪華なミュージシャンによる録音

マイナスワンのCDって、最近ではずいぶん演奏の質がいいものが増えましたね。
教本についてる演奏もプロミュージシャンが演奏しているし、Youtubeにはバッキングトラックがたくさんアップされているし。
ぼくの学生のころにはぺらっぺらの打ち込みみたいなのしかなくて、ひとりで練習するのがあまり楽しくなかったですが、いまではCDに合わせての練習でもかなりテンション上がります。

なかでもこの教本についているCDは演奏が抜群にいいです。
それもそのはず、レコーディングにあたったミュージシャンがニューヨークで活躍する一流どころだから。
メンバーをあげますと、まずピアノがデイヴィット・ヘイぜルタイン、アルトにこの本の著者であるジム・スナイデロ、テナーにエリック・アレキサンダー、トランペットにライアン・カイザー、トロンボーンはなんとスライド・ハンプトン、ギターにジョー・コーン、ベースはポール・ギル、そしてドラムがケニー・ワシントンという布陣。
最初開いてみたときに、まじか嘘だろと唖然としました。2000年の録音ということで、まだ若手のころなのでしょうが、それにしてもすごいメンツ。
演奏内容もお手本演奏を聴いているだけで楽しめます。教則本の付属CDって、なんだか教本用の演奏って感じで、それだけで聴いてる
のは退屈ですが、この本のCDはこれだけで価値あります。もちろんソリストも派手な演奏はしていないのですが、それでも聴かせるんですね。
リズムセクションも「こんなにレイドバックしてテンポが落ちて行かないのが不思議」とか、驚かされました。

もちろんマイナスワン演奏はヘイぜルタインが抜けたバンドに合わせて演奏することができます。
なんて夢のような・・・。引きこもりになりそうです。

ソリストのアドリブも掲載

バッキングの譜面とあわせて、ソリストのソロも採譜されています。
先ほども書いた通り、派手なことはやっていませんが、初級者にとっては十分勉強になるレベル、というかこのくらいでちょうどいいといったレベルです。
バッキングのパターンを覚えるのに加えて、ソロの勉強もいっしょにできます。
ほんとによくできてる本です。

長々と書きましたが、買ってよかった教本のベスト5には間違いなく入るであろう一冊です。
少々お値段しますが、ライブ一回分、レッスン一回分以下でこの内容なら絶対に損はしません。

「ジャズ」をやりたいと思って手も足も出ないでいる方は、とりあえずこの本に載っているボイシングをマスターしてみてはどうでしょうか。とにもかくにも、それでジャズのセッションには楽しく参加できるようになります。
「ジャズ」をやるのはそれからでもいいのでは。

ちなみにこれは入門・初級編で、中・上級者用の続編もあります。
後編のピアノはマイク・ルドン。じぶんの好きなピアニストです。
早く初級編をクリアしてもっとカッコいいボイシングを身につけよう。

ライフワークはジャズとランニングと横浜ベイスターズ。無駄に絶対音感あり。ピアノを弾きます。

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