期待のジャズ・ピアニスト 田窪寛之さんの初リーダーアルバム『トーン・ペインティング』

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待望の初リーダー作。リラックスしたムードでの好演!

川嶋哲郎カルテットのピアニスト 田窪寛之さん

日本のジャズピアニストといえば、上原ひろみ・大西順子・小曽根真の御三家(?)がまずあがりますが、若手はどうなんでしょう。
個人的に若手でプッシュしたいのが田窪寛之さんです。
川嶋哲郎カルテットで活躍されているので、プレイを聴いたことのある方も多いかとは思いますが、まだ一般にはメジャーとは言いにくいところがあります。
そんな過小評価されている田窪さんが、ファン待望のリーダーアルバムを出されました。

ここ数年、ピアニストというとピアノの演奏力に著しく欠けた、文字通り奇をてらったプレイをする(というかそういうことしかできない)人や、「いやいやアドリブできてないから」とツッコミを入れたくなる女流ピアニストさんなどがぽんぽん登場していますが、田窪さんのピアノプレイは本物です。
つい先日記事を書いておりますので、田窪さんの魅力についてはそちらを読んでいただくとして、今回はリーダーアルバムについて。

パーソネルは以下。
田窪寛之 piano
安田幸司 bass
長谷川ガク drums

曲目はオリジナルが中心です。ラスト⑩が田窪さんのソロピアノでした。
1.Amembow
2.Monotone
3.Appassionata
4.Stella by starlight
5.Where to?
6.Conception
7.Dizzy Giddy Rag
8.みつめる
9.Forget about it
10.Embraceable you

誠実にピアノを弾く素晴らしさ

田窪さんのピアノには派手さみたいなものはあまりありません。こう書くと語弊があるかもしれませんが、パワープレイヤーではないと言えるでしょう。山下洋輔さんのような爆発力はない。バイオフラフィにも書かれていますし、演奏を聴けばすぐわかりますが、ビル・エバンスに大変影響を受けられているので、豪快な演奏というよりは知的な、洗練された演奏をされます。
とはいえ、エヴァンス直系のピアニスト(例えばデニー・ザイトリンのような)より、田窪さんのピアノには親しみやすさがあります。僕がこの方のピアノで大好きなところは、そういう音楽的な「優しさ」です。「優しさ」であって、甘さじゃありませんよ。甘いピアノを弾く人は某レーベルにたくさんいますが僕はこの手のピアノがどうしてもダメなので・・・。

僕は田窪さんのピアノにはテディ・ウィルソンに通じる、ピアノに対する誠実さみたいなものを感じます。田窪さんのプレイを観ると、「そうだよな、ピアノってこうやって鳴らす楽器だよな」と毎度思います。僕はテディ・ウィルソンのあの背筋の伸びたプレイが大好きなのです。

今回のアルバムは初めてのリーダーアルバムとは思えないくらい、リラックスした演奏になっています。
どれもライブで聞き慣れた曲で、いい曲ばかりですが、特にタイトル曲の「tone painting」は名演です。何度でも聴きたい曲と演奏でした。
「星影のステラ」も、こういうステラは今までなかったかもと思える演奏でした。
正直、初リーダーアルバムということで、ぎこちなさみたいなところはありますが、全体に非常にクオリティの高い一枚だと思います。
来月号のジャズ・ジャパンがこのアルバムをどう扱うかが気になりますね。まさか掲載しないなんてことないよな。

もうひと押し!欲しい

とはいえ、これが最高傑作とはとてもいえません。
Conceptionはライブで聴かせる時の方がずっといい出来ですし、アップテンポのナンバーでも、川嶋さんのバンドでプレイされている時に出る爆発的な演奏は聴けませんでした。
いい曲を書いて、いい演奏をしている。でも、そこからもうひと押しが欲しいですね。
なんというか、若い頃のケニー・ギャレットに近いイメージ。演奏は間違いなく優れているんだけど、まだブレークしきれていない、というような。

これからですよね。2枚目が今から楽しみです。
ライブにも行きますよー。

ライフワークはジャズとランニングと横浜ベイスターズ。無駄に絶対音感あり。ピアノを弾きます。

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