ジャズ喫茶の最高峰 岩手県一関のベイシーに行ってきました

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ベイシーは一関に花開いたジャズ浄土でした

世界的に有名なジャズ喫茶、一関・ベイシー

2011年世界遺産に登録された岩手県の奥州・平泉。
東京からのアクセスでは東北新幹線で一ノ関駅まで行き、そこからローカル線に乗り換えて五分ほどで着きますが、平泉目当ての方には乗り換え駅でしかないであろう(失礼)この一関に、ジャズファンなら知らぬ者のいない日本最高峰のジャズ喫茶があります。

お店の名前は、ベイシー。
もちろん、デューク・エリントンと並ぶビッグバンドの雄、カウント・ベイシーから取られた店名です。

実はこのお店のマスター、菅原正二さんは、私が大学で所属していたサークルの先輩なんです。
ハイソサエティーオーケストラという全国有数のジャズ・ビッグバンド・サークルなのですが、ここでドラムをやられていた方。
コンボ形式のジャズをやるモダン・ジャズ研究会(通称ダンモ)に所属していたタモリさんと同年代(タモリさんより三つ上)だそうで、当時の有名な逸話「ドラマー殺人事件」の「主犯」はこの方だそうです。※超胡散臭いけど面白いエピソードなので、ご存知ない方はぜひ検索してみてください。

大学を卒業後、地元の一関に戻り、このお店を開いたとのこと。
とにかく音にこだわったお店で、日本のジャズ・ミュージシャンが訪れライブを開催しているのはもちろん、JBLの社長が来日時には表敬訪問したり、海外のミュージシャンが来日時にわざわざ足を運んだり、そして店名の由来でもあるカウント・ベイシーが来店したりと、とにかく伝説的な歴史を誇っており、一関という微妙なロケーションにありながら(失礼)、日本だけでなく世界からジャズファンを呼び寄せる、ジャズ喫茶文化が盛んな日本にあっても特別な存在であり続けているお店です。

学生の頃から一度行ってみたかったのですが、先日、金曜日の朝に突然無性に行きたくなったので、翌土曜日に行ってきました。

結果。
いや、本当に凄かったです。まじで。

昭和の街並みを歩いて十五分、レンガ造りの建物

一関の街並みは昭和がそのまま凍りついたような光景で驚きました。
古い商店がそのままの建物で営業していて、でも人気はなく閑散としていて。
なんだか、千と千尋の神隠しの世界に来たみたい。

古い楽器屋さん
戦前の建物と覚しい古い楽器屋さん。中は演歌のレコード屋さんでした。

こんなところでジャズ喫茶をやって商売が成り立つのかと、ちょっと心配になります(これは全くの杞憂でした)

駅から十五分ほど歩いたところにある建物は、北海道にあるような年季の入ったレンガ造り。
古くからある物件を買い取ったのでしょうか。

扉が開く前から口元がほころぶ音空間

驚いたことに、外からでも既に音が聴こえて来ます。大音量で音楽を流している様子。期待が高まります。

入り口は二つ扉になっていて、一つ目の扉を開けると一気に音楽が聴こえて来ました。
もうこの時点で音の凄さわかります。二つ目の扉のドアノブに手をかける頃には口元が思わずほころんでしまいました。

「いやいや、こりゃ本当に凄いぞ」と。

ジャズの概念が変わる衝撃のサウンド

扉を開けると、もうそこは音楽の嵐。正面の巨大なJBLのスピーカーから大雨の後の濁流のように音楽が溢れ出ています。
ボブ・マーリーの歌で、「俺を音楽で撃ってくれ」というのがありますが、そんなに生易しいもんじゃありません。音楽に流されるというか、<喰われる>というか、とにかくそのくらい壮絶な音です。

女性のスタッフさんに促されてスピーカー正面の一番後ろの席に座りました。とても寛げる席で満足。

繰り返しになりますが(何度でも繰り返します)凄まじい音です。一つ一つの楽器の輪郭がどれもはっきりしていて、ベースがガンガンなっているのに中音域もビシビシ響いてくる。何より全体のバランスが整っていて、「ベイシー楽団がそこで演奏している」と評されるのもなるほどなと頷けました。
僕もジャズ喫茶は結構な数行っていますが、ここまでのものは間違いなく生まれて初めて。しばらくウハウハ笑いが止まりませんでした。

特に驚いたのがドラムの音。
マスターがドラムをやられるのが大きいのだと思いますが、「ジャズのドラムって、こんなにもワイルドなものだったんだ」と目から鱗が落ちる思いです。ライブにだってよく足を運んでいますが、こんなドラムの音聴いたことありません。エルヴィンやフィリー・ジョー・ジョーンズって、やっぱり化け物だったんだなと、初めて知りました。現代のドラマーと全然違うんですね。

それにしてもレコードというのはなんとたくさんの情報を備えているのでしょう。案外、これが一番驚いたことかもしれません。まるで演奏された現場をそのまま冷凍保存して、さっと解凍して見せたような具合。データ容量から言えばSDカードにさえ敵わないあんな野暮ったい板に、どうしてこんなにも素敵な音楽を詰め込むことができたのか。
レコードという器に対しても見る目が変わったと思います・

マスターのこだわりがぎっしり詰まった内装

グランドピアノの上にバラが一輪、ランプがそれを照らす

あとはお店の内装も素敵でしたね。細部にまでマスターのこだわりが垣間見れて、「男の隠れ家」って感じでした。
お店はとても広く、都内のジャズ喫茶の2倍くらいはありそうです。
店内入って左半分がメインのリスニング空間で、右半分がバー空間。
その真ん中あたりにグランドピアノが置かれていて、その上にはバラの花が一輪。そのバラを天井から吊るされた一本のランプが照らしている。

なんてお洒落なんだろうとため息が出る思いでした。マスター自身も薄暗い店内でありながらずっとサングラスをかけてらっしゃって、かっこいいったらありません。
このマスターはご自分の理想を実現したのだなぁと思いました。ジャズ喫茶のイデアといってもいいかもしれません。

マスターも、スタッフさんも、みんな音楽が大好きだ

そしてそして、とっても素敵だったのが、マスターも女性のスタッフさんお二人も、来店したお客さんの相手をするとき以外は自分たちも客席に座って、音楽に聴き惚れているところ。スタッフさんはアルバイトなんでしょうけど、お二人とも本当に幸せそうに音楽を聴いていて、音楽が好き・このお店の音が好きで働いているんだということが一目でわかります。
こんなお店、なかなかないですよね。みんな音楽が大好きなんだ。

一関に新幹線が止まるのはこの店があるからじゃないか

25,000円の交通費をかけて行く価値大アリです

というわけで、しっかり二時間滞在させていただきましたが、新幹線の時間がなければもう1杯コーヒー(1杯1000円ですが、これはまぁ入場料みたいなもんです)を頼んで終わりまでいたかった。結局マスターとも話せずじまい(だってずっと音楽に聴き惚れているかレコードを取り替えに立つかしているんですもの)。もっと長居したかったなぁ。

でも、と店を出て、駅までの道を歩きながら考えたのですが、、、

私もジャズは本当に、心の底から大好きですが、地元とはいえ地方の小さな、単刀直入にいって寒々しい町に店を構え、毎日ただひたすらに音楽を流し続ける生活は、僕には真似できそうにありません。凄いことだと思います。誰にでもできることでは絶対にない。

結論。ジャズ喫茶ベイシーは一関に花開いたジャズ浄土です。
ジャズファンなら絶対一度は行ってください。東京から往復25,000円の交通費を払っても、「表敬訪問」する価値絶対ありますから。

ジャズに興味がない方にもおすすめします。私は午前十時半ごろから午後十五時ごろまで平泉を回ってから行きましたが、時間は十分すぎるほどありました(というか、自転車をレンタルして回ったら三時間もかからず終わっちゃって時間を潰すのに困りました)。

ぜひ帰り道、新幹線の乗り換えの途中でちょっと足を運んでみてください。
「好き」を極限まで突き詰めるとどんなものが出来上がるのか。その一つの答えが見れますから。

Book


道中の新幹線で読んでおきたい一冊。オーディオ専門誌に連載されただけあって専門的な話題はついていけませんが、大学時代の思い出やオーディオマニアとしての生活の紹介など、素人でも十分楽しめます。

Location

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ライフワークはジャズとランニングと横浜ベイスターズ。無駄に絶対音感あり。ピアノを弾きます。

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